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歌詞

2021年7月28日23:56

苦虫を噛み潰したかの様な顔をした

あなたが可笑しくて

手を叩いて笑っていたのは去年の夏

イカがとても好きだから

あなたはよく買ってきてくれた

皮一枚、種まですべて食べ尽くしてしまう私を

あなたはいつも

丁寧に食した皿の上から

面白そうに眺めていた

 

花火がしたいの、まだ春だけど

季節なんて関係ないよ

一緒に見たいんだ

それを振り回して、朗らかに微笑む

あなたの顔が、今すぐに

 

冬が来る前に溶けて消えてしまう

食べかけのアイスクリームと

レモンを絞っただけのかき氷

食べ損ねたまま

わたしの記憶の中で、ずっと

 

あなたは甘いのが苦手だった

それはお互いに

隠して、手を繋いで

 

花火がしたいって、

まだ春だから売っていないでしょう

コンビニにはね

だから駅向こう、

買いに出かけよう

冷たい手を取って、引いた

顔をあげて見れば、

眉を下げて微笑んで応える

あなたは、いつだってそう

優しかった

 

春が来る前に夢は醒める

醒めなければ、生きていけない

時期に大好きな季節がやってくる

あなたの誕生日の頃には

あなたを解放して

わたしもひとり、行かなければ

 

最初からひとりだった

生まれてから死ぬまでそう

だから、大丈夫

すべては内側にあるの

並べたスイカの皮も

アイスもかき氷も

しけてて点かなかった花火の火の粉も

あなたの温もりも、すべて

わたしが生きている限り

わたしの中に在る

喩え、忘れても

 

秋が苦手だった

夏の終わりを告げて

その背には冬の手を引いて、隠しているから

春も少し苦手だった、子供の頃から

はじまりの季節、

そこに純粋に希望を抱けたなら良いのに

あなたに出逢って、それが特別な彩を持った

その日が、

わたしの誕生日と同じに意識して、輝く

 

苦虫を噛み潰したかの様な顔をしたきみは

可笑しくて手を叩いて笑っていたわたしを

ただ黙って見て、聴いていた

面の強がりと虚勢を盾にして

心音に秘したわたしの祈りが、どうか伝って

いつかのあなたを護り、

その幸福な生涯の最期まで運ぶ

風の一縷と働きますように

 

果てまで運び、

最期に鳴る風の一縷と吹き/なりますように